蒲松齢
田中貢太郎訳
底本:「聊斎志異」明徳出版社
1997(平成9)年4月30日初版発行
底本の親本:「支那文学大観 第十二巻(聊斎志異)」支那文学大観刊行会
1926(大正15)年3月発行
入力:門田裕志
校正:松永正敏
蒲松齢
田中貢太郎訳
景の細君が実家へ帰った後、景の友人達は原(もと)のように復縁させようと思って、しばしば景に交渉したが、景がどうしても承知しないので、とうとう夏侯(かこう)という姓の家へ再縁した。その夏侯は景の家の地並びにいたが、田の境のことで代代仲が悪かった。景はそのことを聞いてますます夏侯の家を恨んだ。そして康はその一方で阿霞が来て自分の心を満足さしてくれるのを待っていたが、一年あまりしても行方(ゆくえ)が解らなかった。
ある時、海の神を祭ってある社(やしろ)の祭礼があった。祠(ほこら)の内にも外にもその附近の男女があふれていた。景もその中に交っていたが、遥か向うの方にいる一人の女を見ると、ひどく阿霞に似ているので、近くへいってみた。いったところで女は人群の中へ入っていった。景もそれについていった。女は門の外へ出た。景もまたそれについていったが、女はとうとう飄然(ひょうぜん)といってしまった。景はそれに追っつこうとしたが追っつけなかった。景はもだえながら返って来た。