阿霞

蒲松齢
田中貢太郎訳

阿霞書籍情報

底本:「聊斎志異」明徳出版社
   1997(平成9)年4月30日初版発行
底本の親本:「支那文学大観 第十二巻(聊斎志異)」支那文学大観刊行会
   1926(大正15)年3月発行
入力:門田裕志
校正:松永正敏

阿霞 2

蒲松齢
田中貢太郎訳

それは若い女であった。女は涕(なみだ)を拭いながら、
「母が遠くへまいりましたものですから、私を従兄(いとこ)の所へ頼んでありましたが、従兄がいけない男で、私の世話をしてくれないものですから、私は独りぼっちです。私は死ぬるがましです。」
 といってからまた泣いた。陳は枝にかけてある帯を解いて、
「困るなら結婚したらいいでしょう。」
 といって勧めた。女は、
「でも私は、ゆく所がないのですもの。」
 といった。陳は、
「では、私の家に暫(しばら)くいるがいいでしょう。」
 といった。女は陳の言葉に従うことになった。